★彼と彼氏とグラスの思い出★

基地内のラウンジ。盛大なパーティーとまでは行かないが、仲間が集まって酒が入れば自然と盛り上がって行くもの。
席から少し離れ、賑やかな面々を見守っているのはストリーク。

「ストリーク、飲んでる?」
ご陽気な様子のマイスターがストリークの隣にやって来た。
「どうしたんだい?こんな隅で大人しくしちゃって。もう酔ってしまったのかい?」
「いえ…、俺…そんなに飲めないし、皆の楽しそうな様子を見ている方が、落ち着くんで…」
ストリークは手に持つグラスを弄びながら、俯いて恥しそうに言う。その様子は普段からは想像出来ない程、控えめで大人しい。
「何時もの君なら、真っ先に騒ぎに加わって賑やかにしていると思うけどね」
「そんな…事、ないですよ…」
「…ストリーク?」
明らかに様子が違うストリーク。

マイスターは暫く黙って、彼の隣で自分のグラスに口をつけた。
そしてストリークは、ポツリと呟いた。
「昔の事、思い出してました…」
「昔の事?」
「戦争が始まる前…、首都の近くの小さな街で、偶然プロールに会ったんです…。久し振りに会えて、嬉しかった…」
思い出すのは、平和だったあの頃。ストリークは俯いたまま話を続けた。
「プロールは、仕事の同僚と一緒で…、その人が…とっても綺麗な人で、今でも…覚えてます」
ストリークは、隣に居るマイスターを見て、また恥しそうに俯いてしまう。
「その人を、紹介してくれるって…、プロールと約束して、ずっと…楽しみにしてたんです…」
懐かしそうに微笑むストリークの表情は、いつも何に対しても警戒する、気を許していない強張った表情とは違う。それは別人のような印象を与える。

これが、本当の姿。


「私もね、プロールと約束していたんだよ、可愛い友達を紹介してくれるってネ」
「へぇ…、どんな人でしたか?」
マイスターは表情を隠しているバイザーを外し、俯いているストリークの顔に近寄り、ニッコリと微笑んだ。
「プロールが大事にしている友達、とっても可愛い人だよ。…今でもねv」
「え?」
「君は?、約束の人には会えたのかい?」
「はい、会えました」
「綺麗な人だったろう」
「ええ、…今でもね」
意図している事が伝わり、二人は顔を見合わせて笑った。



不憫な彼のちょっと幸せな話。
でもこの後綺麗サッパリ忘れてしまう…それが不憫な彼(笑)。
酔っている間の記憶が飛ぶと言うのはよくある話ですハイ。
コレと「テキストファイル」のTFお題4.平和はリンクしております。
不憫な彼がまだ普通の青年だった頃、運命の三人の馴れ初め。

日記で一時期盛り上がったお酒ネタ、その中で不憫な彼の酔い様でまたもや自分妄想が膨らみました。
とりあえず、副官とラチェットがサ軍の2大酒豪です。副官は日常がああいう人なので酔っているのか素面なのか境界線が微妙。ラチェットは呑めば呑むほど…最強に成って行きます(怖っ)。
プロールは何事にも節度を弁えてるので…と言うのは建前で、副官のフォローで忙しく酔っても酔った気分になれない可哀相な呑み方…。
ストリークは…酔うと素が出ます昔の素が。性格が変貌する前のあの純朴青年。そして酔いが覚めたら全て忘れるタイプ。
ご子息は未成年設定なので…でも親の遺伝子が行く末を暗示していると思われます。
アラートとインフェルノはどっちも酒に強そうです。

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