★約束の日★ プロ―ルの生命コアが亜空間へ消えてしまった日。 魂が宿らないプロールのBT体の前で、哀しみに暮れるマイスターの側に付き添っていたZoom―Zoom。 それは彼が始めて経験する「死」という現象。 いつも側に居る誰かが居なくなる、もう会えなくなる。 それは「寂しい事」で「悲しい事」なのだと、Zoom―Zoomは認識した。 そして、その日の夜。 ストリークの調整室にZoom-Zoomが現れた。彼の方から尋ねて来るのは初めての事だった。 「Zoom−Zoom…、ああ、そうか。今日はホワイトデーだったな。お返し出来なくてゴメンな…」 ストリークはいつもと様子が違う彼を気遣い、優しく声を掛けた。 「本当はお返しに街まで連れてってやろうと思ってたけど、こんな事になってしまって…」 側によって来たZoom-Zoomはただじっとストリークを見つめていた。 そして、手を伸ばししがみ付く様に抱き付いた。 「Zoom-Zoom?」 「…ストリーク」 マイスターと同じ声音が、自分の名を呼ぶ。ストリークは一瞬戸惑う。 「ストリーク、イナイ。サビシイ」 「え…?」 「ストリーク、イナイ。カナシイ」 「Zoom-Zoom…お前…」 「サビシイ、イヤ、カナシイ、イヤ。ストリーク、ココニイテ」 片言でも、精一杯言葉を紡ぐZoom-Zoomが何を伝えようとしているのか、ストリークは直ぐに理解した。 初めて経験した「死」という現象が、自分にとって誰に当てはまるのか。彼なりに考えた結果がこの行動になったのだと。 ストリークは、不安に怯えるZoom−Zoomを安心させるように、そっと両腕で包み込んだ。 「俺は此処に居るよ。お前を一人にしない、寂しい思いも、悲しい思いもさせないから…大丈夫だよ、Zoom-Zoom」 「ストリーク、ストリーク」 何度も名を呼び、更に強くしがみ付くZoom-Zoomを、ストリークは優しく抱き締めた。 心が芽生え始めた、純粋無垢な存在。これから辛い事を沢山経験する事になるだろう。 その時、側に居て守ってやれるのは自分しか居ない。 「ストリーク」 「これが俺からのホワイトデーのお返しだよ。約束する」 「ヤクソク?」 「そう、約束だよ。俺がお前を守る」 寂しい思いも、悲しい思いも。 辛い思いを、二人で乗り越えて行こう。 それが、約束。 「俺が、側に居るよ、ずっと」 ストリークは強い決意と共に、抱き締める腕に力を込めた。 |
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3月のカップリング祭りのラストを飾った、不憫な彼とご子息の進展話。 「テキストファイル」TFお題「22.戦闘二時間前」とリンクしています。 なんかもう、語るのも恥しい純愛路線街道まっしぐらな二人…。 これでも幸せなんですそっと見守っていきましょう(書くのは自分ですが)。 不憫な彼がホワイトデーに何を贈ったのか気になった方も居たかと思われますが 彼が贈ろうとしていたのは「経験と思い出」です。 でも実際に贈ったのは「約束」でした。 物より思い出、ソレが今のご子息には大切なんです。 スミマセン、やっぱり語るのが恥しいっす…orz。 |
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