◆力関係の事情◆


ディエゴガルシア空軍基地。
快晴の元、格納庫の前の広場では沢山の人だかりが出来ている。

目の前で繰り広げられている、超重量級の格闘戦を。

「どぅりぃあぁあああーーーーーっ!」
「はあああああああーーーーーーっ!」

黒く厳つい体格に似合わず、俊敏な動きで相手の攻撃をかわすアイアンハイド。
銀色でスマートな体格に似合わず、相手の攻撃を受けても退かないサイドスワイプ。

「やっぱり迫力が違うなぁ」
レノックスは心底感心したように感想を言う。
「まったくだ。あんなのが街中で始まったら、そりゃ街の一つや二つ潰れるよなぁ」
エップスも妙に納得したように相槌を打つ。
秘密裏であるが、人類代表として共闘している軍人たちは呆然と眺めていた。
新しく地球に辿り着いたオートボット戦士たちは、不自由ではあるがそれなりに地球の生活に慣れ始めていた。

ゴキンっ!
ガキンっ!!

衝突音が続けば続くほど、身体には傷が増えてゆく。
その度に、ラチェットの鼻がピクンと動く。
軍人たちに並んで同じように二人の模擬戦闘を見ているラチェットの隣には、サイドスワイプと同様に後に地球に到着したジョルトが黙って立っていた。

肉弾戦のぶつかり合いに、根っからの戦士であるアイアンハイドとサイドスワイプは、すっかり初心の目的「手合わせ」の域を超えつつある。
飛び道具を使わないだけ、なけなしの理性といったところか。
しかし、ジリジリと戦闘範囲が移動している、その先には…。
「このままでは、隣の格納庫まで被害が及ぶと思われます」
「はあ〜。まったく、あの馬鹿師弟は…」
「止めましょうか?」
ラチェットのため息に、隣で控えていたジョルトが冷静に状況を分析して提案した。
「ジョルト、電気ショック」
「了解、ドクター」
その直後、ジョルトの両腕から放たれた青い電流が二人を襲った。
『キョピ!』だの『ピキュ!』だのと電子音の悲鳴と共に、アイアンハイドとサイドスワイプはその場に倒れた。

「電脳まで駆動モーターで出来た奴は世話が焼ける。修理するこちらの苦労を少しは考えて欲しいものだがね」
ラチェットは動かなくなったアイアンハイドに近づくと、ブツブツと言いながら彼の首根っこを掴み上げるとそのままずるすると修理室のある格納庫へ引きずって行く。
その後をジョルトも同じように付いて行く。両腕でサイドスワイプの足を抱えて。


目の前の状況を、先程の戦闘とは違う意味で呆然と見ている軍人たち。
その姿に何故か親近感を覚える。
特に妻帯者の軍人たちは。何故か、妙に。
先程までの迫力はすっかり消えうせ、まるで荷物の如く引きずられて行くアイアンハイドとサイドスワイプに、同情せざるを得ない。
『コレが、オートボットたちの力関係か』
そして、心の中で同情の十字を切るのだった。


<おわり>


ホントに、何となく思いついた話でした。
映画で見て、アレだけ広い滑走路が有ればTFのが暴れても(飛び道具抜きで)大丈夫なんではないかと。
肉体労働派のアイアンハイドとサイドスワイプは軍人たちの訓練とか見て、一緒に訓練してると言いと思います。
アイアンハイドとサイドスワイプが師弟という裏設定は美味しいと。寧ろスワイプが戦場でアイさんに助けられて勝手に慕ってるといい。マイ伝のステッパーとシルボルみたいな。
ジョルトのキャラがあやふやですが、ラチェさんの助手ってことで妄想。
ラチェさんには忠実。一人称「自分」。基本会話は敬語使い。見た目と言動は控え目っぽいが押しは強い。
アイラチェ前提でアイさんに過剰な師弟愛でアタックするスワイプを、生暖かく見守るジョルトの片思い。
ジョルトスワイプでおk?。
そんな生暖かいどSはジョルトがイイです(また需要のない茨道開拓)。
スワイプは体育会系どMがイイです。いじめ甲斐がありそうです。