◆15.コード<中編>◆ 「止めろ――っ!!」 マイスターの悲痛な叫びが、無機質な部屋に響き渡たる。 その声にプロールは視線を巡らせると、そこにマイスターが居た。 そして、目の前には自分の頭部を鷲掴みにしている、BT体のスモークスクリーン。掴まれた指の力が徐々に頭部の表面を締め付ける感覚を、プロールは感じた。不思議と恐怖感は沸かなかった。 今のこの状況が、既に経験している事なのだと、冷静に、客観的に、プロールは思った。 目の前の色が、青ではなく銀色だった事以外は、同じだった。 『ああ、あの時と、同じか』 心の中で回想している、あの時。 ストリークがBT体へ、初めて目覚めた時。プロールとマイスターは彼の蘇生に立ち会っていた。 目覚めたストリークが立ち上がり、自分たちの前に戻って来た喜び。 それが、一瞬で打ち砕かれた現実を目の当たりにした。 全ては、自分が犯した過ちだと言われるのなら、これが罰だ。 『ストリーク』 目の前に立つストリークに、プロールは嬉しそうに呼びかけた。隣に居るマイスターも嬉しそうに微笑んでいる。この時を待ち望んだ二人の喜びは、残酷な現実で打ち消される。 プロールの呼びかけに答えないストリークの様子に、その場に居合わせた者の全てに動揺が走る。ただ目の前に居るプロールとマイスターを見つめているストリーク。微動だにしない身体が、逆に不安を掻き立てる。 『ストリーク…?』 『…どおして…』 『何?』 『お前が…プロール、どおして…』 ストリークが呟く言葉の意味を、投げかけられたプロールとマイスターには分からなかった。しかし、その呟きが、彼にとって吐き出したくても吐き出せない感情の断片である事に、まだ二人は気付いていなかった。 ただならぬ雰囲気に不安に思ったプロールがストリークに近づき、触れようとした瞬間。 それが、始まった。 『!?。ストリーク!!』 プロールが触れようとした腕を突然叩き払った直後、その拳がプロールを襲う。 突然の行動に殴られたプロールも、傍に居たマイスターも止める事が出来ず、そのまま実験室には轟音が響き渡った。 『よせ!ストリーク!。我々の事が分からないのか!?』 プロールを庇う様に二人の間に割って入ったマイスターを、ストリークは無言で払い飛ばす。ぶつけられる力に、躊躇のかけらも感じられない。かつてのストリークからは考えられないほどの変貌だった。 突然始まったトランスフォーマー同志の乱闘に、周りに居る地球人スタッフは巻き込まれないよう逃げ回る。その間、蘇生作業の責任者でもあったラチェットとマイスターは、スタッフを実験室から避難さる。 『マイスター副官!、ストリークの動きを封じてください!。その間にこちらで止める事が出来るかやってみます!』 『分かった!』 ラチェットの対応にマイスターが素早く答える。 プロールに襲い掛かっているストリークは、本気でプロールを、殺そうとしている。激情がその身体を覆っているのが分かった。 『ストリーク!止めるんだ!』 『お前が!、お前なんだ!!、お前のせいで―――っ!』 『俺の…、ストリーク…お前…』 『全部お前のせいなんだよ!プロール!!』 叫びながら殴りかかってくるストリーク、その表情は、今までプロールが見たことの無い悲壮なものだった。反撃する事も出来ず、向かって来るその想いに答えることも出来ず、プロールは衝撃に耐えるしかなかった。 『ストリーク―――っ!』 お前のせいで。 ストリークは、確かにそう言った。 プロールに向かって、全部お前のせい、だと。 『ああ…そうか。やはり…俺は…』 全てが、自分の責任だと。 分かっていた。だが、それを認めたくは無かった。 故郷が襲撃された時、助けに駆け付けられなかった事も。 サイバトロンに加入させた事も。 射撃手にした事も。 地球につれて来た事も。 BT体の最初の被験者に選らんだ事も。 ――― その全てが、お前を苦しめる結果となったのなら、それは間違いなく俺の責任だ ――― 『ストリーク…俺は…』 『お前が!お前が!お前がああああ!!』 『止めるんだ!ストリーク!』 止めに入ったマイスターも、ストリークの変貌ぶりに正直混乱していた。しかし彼を止めなくては、本当にプロールが殺されてしまう。形振り構わぬ勢いで、ストリークをプロールから引き離そうとするマイスター。 しかし、それが更にストリークの暴走に拍車を掛ける結果となる。 『お願いだ、止めてくれ!ストリーク!、このままでは本当にプロールが!』 『どおして!どおして!どおして―――!!。俺だって、俺だって―――っ!』 『ストリーク?!』 ようやくプロールから引き離す事が出来たストリークの身体を、マイスターは精一杯抱き締めていた。それでもまだ暴れようとするストリークが叫ぶ言葉の意味を、マイスターは理解した。 『ストリーク、彼の責任じゃない。全ては私の―――』 『違う!違う!違う!、俺は!俺は!俺は!』 ストリークの叫びは、次第に言葉には成らなくなっていた。咆哮とも言える、悲痛な叫び。 『―――-―――――――――――――――――――――――――――っ!!』 怒り、悲しみ、苦しみ。 その全てを含んだストリークの叫び。 その声は、プロールたちの心にも深く響いた。 遂にはマイスターの制止をも振り切り、実験室内に有る機器を破壊し始めるストリーク。 行き場の無い衝動を、物を破壊する事で消化している。 『ストリーク!。ラチェット!まだか!』 『ダメだ!、コントロール機器を破壊されてはこちら側から彼を止める手段は無い!』 『何てことだ…』 『早く止めないと、このまま暴走が続けば彼の精神プログラムが自己崩壊を起こしてしまう』 『何故…こんな事に!』 暴れるストリークを止めようとしながら様子を伺っているマイスターとラチェット。そして、ストリークからの手加減の無い攻撃に晒されていたプロールは、力なく床に崩れ落ち、目の前の惨状を見つめていた。 『すまない…ストリーク…』 何時かはこの時が来ると、心のどこかで覚悟をしていたのかもしれない。 プロールは薄れ行く意識の淵でそう思った。 「すまない…ストリーク…」 「?!」 無意識の内に零れたプロールの言葉に、スモークスクリーンの動きが止まった。 掴んでいた手を突然離すと、持ち上げられていたプロールはまるで糸の切れた操り人形のように、ぐしゃりと床に崩れ落ちた。 「あ…あ…、俺は…あ…!」 スモークスクリーンの目の前には、傷付いたプロールが横たわっている。 その姿が、かつてのストリークの姿と重なった。 戦場で傷付き、恐怖で動けなくなるストリークを、スモークスクリーンは何度も救い出していた。 心も身体も、どれほど傷付けて来ただろう。 守りたかった、大切な親友を。 それを傷付けたプロールが、許せなかった。 だから、自分は彼を…、彼を…?。 「俺は…!?」 ハッとしたスモークスクリーンは、突然苦しみ始めた。 心の置くから沸き上がって来る衝動が、スモークスクリーンの身体を支配しようとする。 違う!、こんな事は望んでいない!。 傷付けて良い訳がない。 プロールもストリークにとっては大切な存在。 自分が傷付けて良い筈がない!。 スモークスクリーンは、自分の身体を必至に押さえ込もうとした。 心と身体が連動しない、それは苦痛となってスモークスクリーンを襲う。その苦痛に耐えながら、彼は少しづつプロールから離れて行った。これ以上、傷付けない為に、必死に動こうとしていた。 「プロール…俺は…、守りたかった。ストリークも…副官も…皆…」 後ずさりながら、スモークスクリーンは必死に訴える。 全ては、愛しい大切な存在の為。 「だから…俺は!、お前が…許せなかった…許せなかったんだ…プロール…!、…すまない…!」 そして、一際大きな叫び声をあげた後、スモークスクリーンの機能は停止した。 そのまま倒れるスモークスクリーンに、一部始終を見ていたマイスターは、言い知れぬ虚無感に打ちひしがれていた。 傷付けられたプロール。 傷つけたスモークスクリーン。 二人とも、今は意識は無い。 マイスターただ一人が残されたこの部屋で、もう一人。 ストリークの銀色のボディだけが、全てを映し出していた。 「何故…、こんな事に…」 大勢の足音が、この部屋に向かって近づいて来ている。騒ぎに気付いたスモークスクリーンの実験スタッフとラチェットが駆け付けてきた。そして、部屋に足を踏み入れた瞬間、その惨状を目の当たりにし、全てを悟ったのだった。 「私は、ただ…彼を救いたかっただけなんだ…、それが、何故こんな事に…っ!」 搾り出すようなマイスターの言葉が、そこに居た全ての者の心に深く突き刺さった。 <To be continued…> 2007.11/5 UP |
スミマセン、終わりませんでした…orz。 この次こそは完結させたい、です(自信が無い今現在)。 これもまた、自分妄想設定が出来てからずっと考えていたストリークの暴走事件。トラウマの真骨頂。 TFお題のBTシリーズを御覧になると、話の片鱗が繋がっている事が分かると思います。 しかし、自分はプロールに何か恨みでもあるんだろうか?。ボコルのが楽しいんですけど(酷っ)。 べっこり凹む副官が書けて、それはそれで良かったと思ってます。 しかし、前回も含めて出番の無いくせにストリークの名前だけは一番登場回数が多い。 どんだけ愛されてんだ彼(笑)。 えー…。次こそ頑張ります…orz。 |
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