◆5.激戦◆ 迫り来る敵を前にして、ストリークは言った。 「おいでなすった。どうする?相手をしてやるか?」 隣に居るプロールはいたって冷静だ。 「いや、雑魚を相手にしている時間は無い。中央突破だストリーク!」 「よしっ!、トランスフォーム!」 ビークルモードにトランスフォームをし、二人は敵陣の中に飛び込んでいった。 デストロン基地内に轟く銃声と爆音。 飛び散る火の粉に、行く手を眩ます黒煙の中を突き進む二つの影。 デストロン歩兵勢がその影に向かって一斉に銃口を向ける。雨の様な弾幕を掻い潜り突き進む二人。 「プロール!俺の後ろに着け!。突破口は俺が作る!」 その時、その内の1発がプロ-ルのサイドミラーに命中した。 「うわっ!?」 「プロール?!」 「大丈夫だ!、それより先を急げっ!後方からも迫って来たぞ!」 「くそ…っ、トランスフォーム!」 ストリークはロボットモードに戻ると、銃を構え基地通路の辺り一体に乱射を始めた。 「ストリーク?!何をしてー」 「黙ってろ!」 乱射したビームは敵を蹴散らし、同時に周囲の壁や床や天井に大きな穴を開けた。 小さな爆発がやがて大きな爆発を誘発すると、炎と爆風で殆どの敵が吹き飛び、追っ手も後退していく。 その隙を突いて、ストリークは壁に空いた穴のうちの一つにプロールと共に身を隠した。 暫らくして、敵の気配が去った事を察知した二人は、張り詰めていた神経を緩めた。 ロボットモードに戻ったプロ-ルは、呆れたように言った。 「まったく…、無茶苦茶だな」 「隠れるのも戦術の内って、スモークスクリーンも言ってなかったか」 悪びれた様子も見せず、ストリークは笑った。 逃げ込んだ場所はどうやら倉庫のようだ。しかし荷物らしい物は殆ど持ち出された後だろう。 さほど広くない部屋の中、二人の声はやけに大きく響いた。 「そろそろ行くか」 「別働隊は上手くやったかなぁ?」 「オーバードライブ達が基地の反対側から進行中のはずだ」 「まったく、ランボルとトラックスがもっと派手に暴れてくれりゃ、敵をそっちに引き付けられたのによ」 「こちらに追撃隊がこない所を見ると、どうやらそっちも上手くやってる証拠だろう」 ストリークはプロ-ルの左肩を見た。 「ミラーが飛ばされただけですんで良かったよ」 「コレくらい平気だ」 「トラックスだったら、泣いて凹むんだろうなぁ」 「そうだな」 その様子を思い浮かべて、二人は笑った。 此処が敵陣の中心であるにも拘らず、その心は妙に穏やかだ。 |
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「なぁ、プロール」 「何だ?」 「もし…、どうにもならない状態に陥ったら、俺を盾にしてでもお前は逃げるんだ」 「なっ…何を言ってるんだ!、そんな事を出来る訳が無いだろう!」 「やるんだ。お前は何があっても生き延びなくちゃならないんだ」 ストリークの表情は真剣だった。 いつもの様なお喋りの延長から出た軽口でも誇張でもない。 「絶対に死ぬな。俺が盾になってやる」 「ストリーク…お前は」 滅多に見せない、それは彼の本心。 「プロ-ルが死ねば、大事な地球人の友人まで失う事になる、それに…」 ストリークは、此処には居ない彼の人を見て、その相手を想いながら言った。 「もう二度と…、あの人を悲しませたくないからなぁ…」 「あの人?…あ」 プロールには心当たりがあった。上官でもあり相棒でもある彼の人。 プロ-ルはストリークと正面から向き合う。 「誰が死んでも、誰かが悲しむ…。犠牲になって当たり前の命なんて無い…」 そう言って彼の肩に手を掛け、諭すように言いきかせた。 「彼なら、きっとそう言うだろう。だからお前も死ぬな」 向き合ったまま、暫らく沈黙が二人を包む。 想う相手は二人とも同じだった。 しかし、その想いに宿る情の種類は違う物。 |
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「分かってないな」 「何をだ?」 「それが分かって貰えれば、俺も心置きなく逝けるんだがな」 「またそう言うことを…。お前のBT化が一時凍結された時、彼がどれだけ悲しんだか」 「だから、それが違うんだよ」 ストリークは笑った。しかし、プロールにはそうは見えない。 誰かを想う心、それがどう違いがあるのか。 プロ―ルにはそれが理解できなかった。 遠くで一際大きな爆音が響いた。 『プロール!ストリーク!応答してくれ!、何処にいる!?』 通信機からオーバードライブの切羽詰った声が響いた。 「こちらプロール、中心エリアから2ブロック北の倉庫らしい部屋にいる。何があった?」 『北か。ラヴィッジがそちらに向かって逃亡中だ。ホイルジャック達の陽動部隊と合流して奴を包囲してくれ、我々はこのまま追撃する』 「了解」 「そろそろ大詰めって訳か」 「奴を倒せば、歴史改変は食い止められる、この戦争も終るだろう」 「そうだといいがな」 二人は先程の戦闘で瓦礫の山となった通路に出た。 所々で燻る火の手を踏み越え、通路の先を見据えた。 「ストリーク。さっきの話、忘れるな」 「お前こそ、うっかり死ぬなよ」 それぞれの想いの中で、戦いはまだ、終らない―――――。 <END> 2005.12/11UP |
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二人が言う「彼の人」とは、勿論マイスターの事。 ストリークはマイスターに惚れてます、勿論「そう言う意味」で。 マイスターはプロールを自分にとって「精神的な支え」として特別に想っています。 プロ―ルはそう言う心情の繋がりには気付いていません。 見事な一方通行…(切ない)。 |
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