◆8.青い◆ 某エネルギー開発研究所付近。 快晴の青い空の下、サイバトロン戦士の鋼鉄のボディが太陽の光を反射している。 デストロンとの戦闘をようやく撃退したサイバトロンでは有るが、身体一つで戦う以上決して無傷という訳には行かない。 地球人によって造られ、地球で生まれ変わった彼らーバイナルテックー戦士は、そのダメージは如実に現れる。 今日も一人、名誉の負傷者が…。 ビークルモードのままひっくり返ったトラックスを元に戻しながら、副官マイスターが声を掛けた。 「動けるか?トラックス」 「大丈夫…と言いたい所ですが、正直無理です」 目に栄える美しい黄色いボディは、勿体無いほど傷だらけ。 「また酷くやられたな」 「その分じゃ自力で基地に戻るのはキビシいだろう、誰かに牽引してもらうか?」 マイスターと一緒にトラックスを元に戻したランボルとストリークが、彼の状況を見て心配の声を掛ける。 「出来ればそうお願いしたいね」 車体の下に隠れているトラックスの顔は、苦笑いになる。 そこへプロールが近づいて来た。 「その状態では修理に時間が掛かるだろう、暫らくGHSユニットを使うといい」 ーGHSユニットー、それは予備のホスト機体として、一時的に自分の分身として使う事の出来るプロールと同型のバイナルテック体である。 そう言われた瞬間、トラックスの車体がビクッと跳ね上がった。 「いや!結構だ!」 「何を言う。その身体では次にデストロンの襲撃を受けた時に出撃できないだろう?。以前と違いこのバイナルテック体は地球人の技術者によって整備されているんだ。修理にも時間は掛かる。君はその間の任務を放棄する気かね?」 「それでも!、僕はこの身体以外は使いたくない!」 プロールとトラックスのやり取りに、周りに居たランボルとストリークは肩をすくめた。 「やれやれ、またか」 「修理になる度にこれじゃ、手間の掛かる奴だよ」 「以前はボディに傷が付くのが嫌で、戦う事もお留守だった奴が、今じゃランボルに次いでラボの常連だからなぁ」 「俺を引き合いに出すなよ、こっちだって命がけで戦って付いた傷なんだぜ」 「まぁ、積極的に戦ってくれるのは良い事だけど、修理を任される技術者達が可哀相になるぜ」 「それを言うなよ…」 二人がそう言って居る間も、トラックスは駄々をこねていた。 「別にその身体を捨てろと言っている訳ではない、修理が終るまでの間だけ分身体をメインに行動してくれと言っているだけだ。一体君は何がそんなに不満なんだね?」 「僕の美意識が不満だって言ってるんだ!」 「美意識?。ボディカラーは以前の君と同じ青だぞ、むしろ不満は無いと思うがね?」 「冗談じゃない!、あんな軽薄な青と一緒にするな!」 トラックスが叫んだ不満の理由に、ランボルとストリークは呆れるどころか、頭を抱えたくなった…。。 「僕のこの流れるような優美なボディラインに、曇り一つない澄み切った青!。今の身体の光学迷彩だってそれを忠実に再現できるようになってるんだ!。その辺の青と一緒にしないでくれ」 チャキン☆×2。 トラックスの正面に立っていたプロールの手にはアシッドペレットガンが握られていた。 引き金に指が掛かるのも時間の問題。 「いい加減にしないかトラックス。何ならここで、GHSユニットに完全な移植しなくてはならない状況にしても良いんだぞ」 「あ、いや、それこそ結構だ…」 普段は感情を表に出さない忍耐強いプロールの、固い堪忍袋の緒が緩んだ。 しかし、もう一人トラックスに銃を向けている人物が背後に立っていた。 「プロール、君が怒るのは分かるんだが…、マイスター副官!、そのフォトンライフルを仕舞ってください!!。何で貴方まで怒るんですかぁ!」 「おや?いつの間に。思わず構えてしまったよ、ははははは(笑顔)」 相変わらず飄々と、それでいて爽やかに笑うマイスターに、何故か冷たい物を感じずには居られない。 「プロール言うとおりにするんだよトラックス。これは副官命令だ」 そうって愛用の銃を下ろしたマイスターは、またニッコリと笑顔を見せた。 「おーい!」 「戻ってきたな」 撤退したデストロンを追跡していた、スモークスクリーンとハウンド。それにグリムロックとオーバードライブ。 深追いする事を諦め、現場に戻ってきた。 「まだ此処に居たんですか?。てっきり基地に帰還しているものかと」 「まぁ、ちょっと後始末に手間取ってね」 「後始末?」 ハウンドが視線をめぐらせれると、先に気付いたスモークスクリーンが指差した方には、傷ついたトラックスとその前に立つプロールが見えた。 納得とばかりに頷くハウンドとスモークスクリーンとは対照的に、オーバードライブは何の事やらと首を捻った。 「皆揃った事だし、基地に帰還しよう」 「グリムロック、トラックスを引っ張って行ってくれないか?。一人では動けないんだ」 「ちょっと!、まだ僕は了解したわけじゃないっ…うわぁっ!」 「オレ、グリムロック。お前戦士なのに情け無い。黙っていないとオーディオ回路も潰す」 「やめろって!、お前のバカ力で捕まれたら、それこそ僕が潰れるぅ!」 「本部に居るホイルジャックに連絡しておこう、至急GHSユニットを1体用意しておくようにってね」 トラックスの悲鳴と共に、サイバトロン戦士たちのエンジン音が戦場の跡地から遠ざかって行ゆく。 いつの間にか青い空は、次第に黄昏色に染まって行くのだった。。 <END> 2005.11/23UP |
初のバイナルテクネタで御座いました。 青と聞いて真っ先に思いついたのはトラックスのボディカラーでした。 そして、プロールと同時発売だった、青いプロールの設定から今回の話を思いつきました。 何気に、サイバトロンキャラを全員出したつもり(アスタリクス除く)。 |
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