◆28.せんし


サイバトロンの戦士となって、まだ間もない頃の事です。

割り当てられた小さな部屋にストリークは一人で居ました。
ベットの上で膝を抱えて座り込んでい、今日の戦いの事を思い出していました。でも、殆ど思い出せません。
ストリークは覚えていないのです、ただ断片的に自分が敵を撃っている事しか思い出せないのです。思い出す事を心のどこかで抑えている、臆病な心が戦いの事を忘れようとしているのです。

でも例え忘れられたとしても、身体に染み付いた硝煙の匂いは、嫌でも其処が戦場だと言う事を思い出させるのでした。

ストリークは抱えた膝に顔を埋めて、ただじっと耐えていました。

今日は助かっても、明日は助からないかもしれない。
自分も、仲間も、そして敵も…。

怖い怖い怖い怖いこわいコワイ恐い恐い。

押し寄せる恐怖に、ただ身を強張らせて耐えるしかありませんでした。


突然部屋のドアが開きました。同じ様にこの部屋を割り当てられた戦士が戻ってきたのです。
彼は暫く入り口で部屋の中の様子を伺っていました、案の定と心の中で溜息をつき、そして部屋の中に入るとストリークの隣に座りました。

「スモークスクリーン」
「何だ?」
「怪我は?」
「ああ、たいした事無いさ」
「…ゴメン」
「気にするな」

スモークスクリーンは部屋に戻る前まで医務室に居ました。
戦場に出る度に怪我をする彼の事を、ストリークも気にかけていました。そしてその原因が自分自身であることも…。

「フォロー役がフォローされてちゃ、世話無いな。ちゃんと隠れて撃ってろよ、お前は後方支援なんだからさ」
「ゴメン」
「気が付いたら俺より前に出て、慌てたぞ」
「ゴメン」
「もっとも、そのお陰で俺も助かったんだけどな」
「ゴメン」
「…バカ、今のは礼を言ったんだよ」
スモークスクリーンは腕を伸ばして、ストリークの肩に腕を回しそのまま引き寄せました。

「無理するな、怖いのはお前だけじゃない…」
引き寄せて触れたストリークの身体が僅かに震えている事に、スモークスクリーンは気付いていました。安心させるように回した腕に力を込めて抱きました。
「俺だって怖いさ」
スモークスクリーンが怖いのは、大切な親友を失ってしまう事。
ストリークの命を救った時から守ってきたのは、義務感や同情からではなく、ただ大切な親友として昔のあの笑顔を取り戻して欲しかったから。


「大丈夫さ、俺が付いている」
「ゴメン」
ストリークはスモークスクリーンへ身体を預けて、目を閉じました。
閉じた瞼から零れた涙を、スモークスクリーンは見ないフリをしました。


<END>
2006.8/31UP


久し振りのTFお題に挑戦。
ココ最近自分妄想設定でブームだったスモスク×ストリークで、過去のトラウマ話。避けて通れませんこのネタだけでどんだけ引っ張るつもりよ自分。だって美味しいんです。こうやって不憫な彼を支えていたスモスク、精神的にも肉体的にも…とこう書くと何かイヤンな展開を想像しそうですが、まったくもってその通りの展開の方向で(どんな方向ですか自分)。
本当に何故に海外ファンフィクでも無いんだろうこのカップリング。

本当は別のお題でこのカップリングを描くはずでしたが、こっちもオイシイのでそのまま描きました。その別のお題の方も考えていますが鈍い戦略家さんが上手く動いてくれません。副官がらみじゃないと動かし辛いな鈍い彼(笑)。


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